>>416 土曜、11時半。 アラームはない。予定もない。 目が覚めて最初に開くのは、当然のように爆サイ。 昨日の火種はちゃんと燃えている。 「やっぱりな」 自分が投げた一言で、知らない人間同士が言い争っている。 それを眺めていると、自分が“何かを動かした側”にいる気がする。 昼過ぎ。 部屋にいると、自分の輪郭が曖昧になる。 それが嫌で、外に出る。 行き先はいつも通り、新宿。 新宿駅。 人の流れに混ざりながら、ふと思う。 (全員、意味ありげな顔してるな) 自分だけが空っぽに見える瞬間、足が少し止まりかける。 だから、やる。 避けない。 ほんの少しだけ、進路を譲らない。 ドン。 相手の肩に当たる感触。 一瞬の視線。 それだけで、さっきまで薄かった自分の存在が、少しだけ濃くなる。 (ああ、これでいい) 数回繰り返す頃には、理由なんてどうでもよくなる。 ただ、「いる」と思える。 夕方。 ベンチでスマホを開く。 「新宿駅、ぶつかりおじさん多すぎ」 書き込むと、すぐに同意が集まる。 自分がやった側であることと、書いている内容は矛盾している。 でも、その矛盾が気持ち悪いとは思わない。 むしろ自然だ。